| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-027 (Poster presentation)

二次的接触後のニワゼキショウ類における繁殖干渉と種内多型の進化

*高橋佑磨(東北大・学際フロンティア),高倉耕一(大阪市立環境研),河田雅圭(東北大・生命)

遺伝的多型は動植物の様々な分類群で認められる現象である。ただし、虫媒の植物においては、訪花昆虫が正の頻度依存的な採餌を行なうために多数派が有利になりやすく、必然的に花色に多型が進化しにくいことが知られている。アメリカ大陸原産のニワゼキショウ属植物は数種が日本に定着しており、このうちニワゼキショウには遺伝的な花色2型(白型と紫型)が出現する。本研究では、本種の花色2型の維持機構と型比の空間変異の成立機構を明らかにすることを目的として以下の調査と実験を行なった。ニワゼキショウの2型と白色の花を有する近縁種(オオニワゼキショウとコニワゼキショウ)の分布を調べたところ、近縁種と共存する場合はニワゼキショウに2型が出現し、ニワゼキショウが単独で生息する場合は白型が個体群を席巻する傾向が認められた。また、近縁種と共存する生息地においては近縁種の出現頻度の高いパッチほど白型の割合が低下していた。これらの結果は近縁種の存在が2型の維持や空間分布に影響することを示唆している。次に、色彩の遺伝子座について遺伝子型を特定したニワゼキショウに対して同種あるいはオオニワゼキショウの花粉を授粉させたところ、いずれの場合もホモ接合よりもヘテロ接合の個体において種子数が多いことがわかった。すなわち、超優性選択が2型を維持する潜在的な選択圧になっている可能性がある。このとき、種間交配によりニワゼキショウの種子生産数が減少する傾向あり、繁殖干渉の存在も示唆された。なお、野外では白型が紫型よりも高い確率でオオニワゼキショウと交雑しているようであった。本講演では、これらの結果と送粉昆虫の行動様式などを考慮しながらの多型の維持や時空間変異の成立の機構について議論する。


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