| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-034 (Poster presentation)

警告色はなぜ派手でなければいけないのか?-警告シグナルの提示が捕食者の記憶維持に与える影響-

*本間 淳(兵庫・森林動物セ),Johanna Mappes (University of Jyvaskyla)

体内に毒物質を蓄積していたり、潜在的な捕食者にとって質の低い形質を持っていたりする動物は、よく目立つ体色を持つ例がよく見られる。これを警告色と呼び、被食者が目立つ体色というシグナルによって自身のまずさを捕食者に伝え、攻撃を避ける機能があるとされる。目立つ色を用いることで捕食者の視認性が上がる以外にも、忌避学習の効率が上がる報告がある。これに対し、目立つ色が捕食者の記憶にどのような影響を与えるのかは明らかでない。

まずい餌を食べた捕食者は、くちばしをぬぐう、水を飲む、羽をふるわせる、などの特徴的な反応を示す。また、警告色を忌避学習した捕食者は、その後は同じ警告色を視認しただけで同様の反応を見せることが観察されている。そこで我々は、警告色を忌避学習した捕食者に対する警告色の提示は、たとえ実際の摂食が起こらなくても捕食者にストレスを与え、忌避学習成立後の記憶の維持につながるのではないかという仮説を立て、実験的に検証した。

捕食者(アオガラ)を実験区とコントロール区に分け、警告色の人口餌を8回与えて忌避学習をさせた。その際、各トライアルの間に実験区では警告シグナルを、コントロール区では餌と無関係な視覚シグナルをそれぞれ捕食者に提示した。また、忌避学習成立後には、各区に対して視覚シグナルの提示のみを2回行い、その後記憶テストを行った。その結果、実験区の個体の方がコントロール区より記憶テストにおいて有意に強い忌避反応を示した。以上の結果より、派手な警告色は忌避学習を促進するだけでなく、忌避学習が成立した捕食者に対してもその記憶をよりよく維持させる効果を持つことが明らかとなった。


日本生態学会