| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-050 (Poster presentation)

タンガニイカ湖で共存する藻食シクリッドの生息場所と餌資源にみられるニッチ分化

*畑啓生(愛媛大・院・理工),田辺晶史(水研セ・中央水研),山本哲史(京大・地球環境),東樹宏和,(京大・院・人環),柴田淳也(愛媛大・沿岸環境),大森浩二(愛媛大・沿岸環境),幸田正典(大阪市大・理),堀道雄(京大)

アフリカ大地溝帯の古代湖、タンガニイカ湖では、シクリッド科魚類の顕著な適応放散がみられ、16族のシクリッドが200種以上に分化し多様化している。うち5族のシクリッドは藻食性に特殊化し、著しく多様化しながらも、一つの岩礁上に共存している。これらの藻食シクリッドについて、2010年に胃内容に含まれる藻類と、摂餌なわばり内に繁茂する藻類群落を採集し、メタゲノミクス解析によりそれらの藻類組成を調べた。またなわばり内の藻類群落とシクリッドの魚体を用いて安定同位体解析を行った。さらに同一コドラートでの14年に亘る魚類群集センサス(Takeuchi et al. 2010)から藻食魚を抜き出し生息水深と底質選好性を解析した。結果、これらの藻食性シクリッドは、摘み取り食から梳き取り食が進化して両者が多様化し、摘み取り食者種間では利用する底質と水深を違え、梳き取り食者種間では水深を違えていることが分かった。そのためそれぞれのなわばり内に成立する藻類群落は異なり、さらにシクリッドは藻類を選択的に利用することで、類似した食性を持つ種間でも異なった藻類を主な餌としていた。炭素安定同位体分析の結果も種間で異なる水深帯の光合成産物を主に利用していることを示唆した。このように、タンガニイカ湖の藻食シクリッドは、その適応放散の過程でまず摂餌様式を多様化させ、さらに生息場所を特殊化させて、結果異なる餌ニッチへの分化を成し遂げ、現在一つの岩礁上での多種共存が可能となっていることが分かった。


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