| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-056 (Poster presentation)

サルはなぜ川岸で眠るのか:ボルネオ島に生息する霊長類複数種の河岸林利用形態

*大谷洋介 (京都大学 霊長研), 松田一希 (京都大学 霊長研)

動物種がどのように土地の利用形態を分化させるのか、その生態学的・行動学的特徴の影響を明らかにするためには同所的に生息する複数種の比較が必要である。本研究ではマレーシア・ボルネオ島・キナバタンガン川支流の河岸林に生息する複数種の霊長類のうち、特に近縁種であるミナミブタオザル(Macaca nemestrina)<i/>とカニクイザル(Macaca fascicularis)<i/>に着目し、体サイズや食性の異なる彼らがどのように土地利用を分化させているのかを明らかにした。ボートセンサスによって2種が川岸へ現れる時間・場所・個体数を記録し、降雨量・川幅・果実生産量といった環境要因が両種の出現に与える影響を評価した。両種は主に夕方に川岸に現れ、果実生産量の大きい場所を利用していた。また泊まり場として比較的大きなサイズの樹木を選択する傾向があった。これは捕食者回避戦略の一環であると考えられる。またカニクイザルにのみ、川幅の狭い場所を利用する傾向があった。これは川岸の樹木から川に飛び込み、川を渡る行動がカニクイザルにのみ見られるせいだと考えられる。両種は、同所的に生息する他の霊長類種と比べて似た傾向を示すものの、行動上の特徴により選好する場所に相違が見られた。


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