| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-058 (Poster presentation)

琉球列島における海岸性動物の分布境界線の検討: ギャップはどこ!?

*河井崇(琉球大・理),坂巻隆史(東北大・災害),鈴木祥平(東北大・災害),大澤正幸(島根大・汽水セ),吉田隆太(琉球大・理)

琉球列島は,大小様々な島々を含む幾つもの諸島・列島から成り立っており,そこには日本本土とは趣を異にする陸生の動植物が多数生息している.この多様な生物の系統分類や地理的分布に関する研究は20世紀前半から盛んに行われ,三宅線・渡瀬線(トカラギャップ)・蜂須賀線(ケラマギャップ)といった生物地理学的に重要な分布境界線の存在が認識されてきた.また,これら陸上生物の生物地理学的な知見をもとに,琉球列島形成に関する新たな古地理仮説が構築されるなど,分野を超えた研究の統合にも貢献してきた.その一方で,琉球列島における海洋生物の分布に関する網羅的研究は,イシサンゴ類などの一部の分類群を扱ったものを除き非常に少ない現状にある.そこで我々の研究チームでは,2011~2012年にかけて琉球列島のほぼ全域にわたり複数の分類群(魚類,ヤドカリ類,貝類,棘皮動物,イシサンゴ類)の定量的な分布情報を得ることにより,海洋生物における分布境界線等の地理的分布パターンの認識と,その形成機構に関する仮説の構築を試みている.

本発表では,ヤドカリ類と魚類の地理的分布パターンについての解析結果をもとに,陸上生物と海洋生物間の相違点,及びヤドカリ類と魚類間の相違点について紹介する.ヤドカリ類では3つの分布境界(種子島―屋久島間・屋久島―トカラ列島間・トカラ列島―奄美群島間)が,魚類では4つの分布境界(種子島―屋久島間・屋久島―トカラ列島間・トカラ列島―奄美群島間・宮古列島―八重山列島間)が確認された.これら分布境界の形成要因,及びその違いについて,生物の移動分散様式・能力,温度耐性,黒潮による障壁・ベルトコンベア機能の影響等の側面から考察したい.


日本生態学会