| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-069 (Poster presentation)

農薬によるDaphnia2種への慢性影響

*真野浩行(土木研), 坂本正樹(富山県立大,工), 永田貴丸(琵琶湖環境科学研究センター)

湖沼において、動物プランクトンのミジンコ類は一次生産者と魚などの高次栄養段階の生物間でエネルギーや物質の橋渡しをする重要な役割を担っている。また、ミジンコ類は農薬などの化学物質の影響を受けやすい生物種として知られている。化学物質によるミジンコ類の繁殖や個体群成長率などに対する慢性的な影響に関する知見は、遊泳や生存などに対する急性的な影響に比べて少ない。本研究では、農薬によるミジンコへの慢性影響の調査として、オオミジンコ(Daphnia magna)を用いて、除草剤であるシメトリンの繁殖試験を行った。また、オオミジンコは日本での生息が確認されていないため、本研究ではオオミジンコと同じDaphnia属で、日本の湖沼に広く生息するカブトミジンコ(D. galeata)を用いて繁殖試験を行った。試験結果から2種の産仔数に対する半数影響濃度 (EC50)を推定したところ、オオミジンコとカブトミジンコに対するEC50の推定値と95%信頼区間は、それぞれ8772μg/L、7063-10481μg/L、5622μg/L、4782-6462μg/Lとなり、シメトリンはオオミジンコの産仔数よりもカブトミジンコの産仔数に対して低濃度で影響することを示した。また、濃度区ごとに内的自然増加率を推定し、内的自然増加率に対するEC50を算出し、既報の急性影響、産仔数や内的自然増加率に対する慢性影響を比較することで、異なるエンドポイントに対するシメトリンの影響の違いについて検討した。さらに、現在、殺菌剤のイプロベンフォスについて、上記2種を用いた繁殖試験を行っている。この研究により、対象とした2種類の農薬によるDaphnia2種に対する影響の違いを明らかにする。


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