| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-074 (Poster presentation)

アリスイにおける協同繁殖

*橋間清香(立教大・理),加藤貴大(立教大・理),上田恵介(立教大・理)

鳥類は全種のうち90%以上が社会的一夫一妻と言われており、一夫多妻など複数の同性が繁殖に関わる種は多くない。さらに、同一巣に複数のメスが産卵する「ジョイントネスティング(共同営巣)」の形態をとる種類はダチョウやカモの仲間などのごく限られた種でしか知られていない。また、同性ペアによる繁殖行動は、制約の多い飼育下のペンギンなどではしばしば観察されるが、自然下では稀である。しかし我々は、アリスイJynx torquillaにおいて同性(雌雌)ペアが共同営巣したという、非常に興味深い事例をビデオに収めたので報告する。

2013年、調査を行なった秋田県大潟村では4月中旬にアリスイが渡来し、防風林5.7kmの範囲にかけた巣箱に21ペアが繁殖した。基本的には一夫一妻だったが、2年間で4例の一夫二妻が確認された。アリスイが営巣した巣箱には、親個体の巣への出入りと巣箱内部が見えるようにビデオを設置し、繁殖に参加した個体の識別および同時に産卵した様子を撮影した。雌雌ペアが産卵した巣箱に設置したビデオ映像から、この巣にオスは来ておらず繁殖に参加していないことが確認された。この雌雌ペアは2回目の繁殖も行なったが、1回目、2回目とも全卵未孵化だった。

アリスイは日本では北海道と東北地方北部の一部地域でしか繁殖しない。調査地である大潟村では、アリスイが高密度に繁殖する。このように生息地が限られており、高密度の繁殖地においては、営巣場所やつがい相手が不足している可能性がある。これらの要因が、雌雌ペアの形成および共同営巣の背景にあったと考えられる。またアリスイでは繁殖失敗してもつがい関係を継続するが、同性ペアであっても、同じペアで続けて2回繁殖したという事実は、アリスイにおけるつがいの絆の強固さを物語っており、興味深い。


日本生態学会