| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-081 (Poster presentation)

エゾサンショウウオ幼生の表現型可塑性による多型の形態解析

西村 欣也(北大・水産)

エゾサンショウウオ(Hynobius retrdatus)幼生は、表現型可塑性によって生態学的に重要な機能を果たす形態に多型が生じる。そうした形態は広幅頭や高尾として観察されるので、体の外形輪郭の適当な点間の長さの比(比変量)によって、かたちの特徴が計量されてきた。例えば高密度生息環境で生じる共食い型は、最大頭幅に対する顎幅の比変量の高い値で他の型の個体から区別できる。

本研究では、これまで比変量によって捉えてきた共食いに関連して生じる多型形態を、形状をなぞるランドマーク座標を用いて幾何学的形態解析法によって解析し、多型形態の形状特異性を明らかにした。

孵化直後の幼生を高密度、低密度で飼育し、12日目の生存個体数と形態、体サイズを測定した。背面投影のランドマーク座標に基づく主成分分析の第一主成分スコアは、顎幅/頭幅の比変量よりも共食い型と非共食い型の多型分化を上手く表すことが出来ることが分かった。共食い件数と共食い型の形状、共食い型の出現数に関係が見いだされた。比変量で背鰭頭部高の増大として捉えられる非共食い型の特徴が、側面投影のランドマーク座標に基づく主成分分析から、体全体の側面形状の特性として明確に捉えられた。背面と側面の形状特性と体サイズの間の相関が型ごとで異なることが明らかとなった。背面、側面の形状情報を用いた正準判別分析は、個体の形状特性を明確化し、高い分離度で型判別できる手法であることが明らかとなった。

比変量による多型の把握は、感性に基づき弁別が可能なほどに形状差が生じているときに簡易的な方法として有効である。幾何学的形態解析法による多型の把握は、形状差が少ない場合にも有効であり、形状についての豊富な情報を与えるものである。


日本生態学会