| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-089 (Poster presentation)

学習できないゾウムシコガネコバチ同胞種でも宿主2種の交替振動が発生可能か?

*嶋田正和,笹川幸治,柴尾晴信(東大・総合文化・広域),石井弓美子(国立環境研)

ゾウムシコガネコバチは、頻度依存的な匂い学習で宿主アズキゾウムシとヨツモンマメゾウムシ2種の選好性が変わり、宿主の交代振動が発生して3者系が長期持続性を示す(Ishii & Shimada, 2012, PNAS)。一方、ゾウムシコガネコバチには形態が酷似する同胞種が知られ、同じ宿主範囲を持ちながら生態や行動は異なる面が多く、マメゾウムシ2種への匂い学習がほとんどできない(Sasakawa et al., 2013, Naturwiss.)。今回は、同胞種の蜂を用いて、既報と同じ3者長期累代実験系を組み、予測として交代振動が発生せずに3者系が早々と崩壊するかを解析した。これと並行して、マメゾウムシ2種を宿主とした時の同胞種の基礎的性質も短期実験で調べた。長期累代実験系は、アズキとブラックアイ豆を10gの混合比を変えてAZ:BL=10:0、8:2、5:5、2:8、0:10の5条件を設けた。前者は種皮が固く寄生効率が低く、後者は宿主が薄く寄生効率が高いので、混合比で捕食圧を調整できる。1週間毎に豆更新と虫の個体数を算定した。宿主2種は最初3回♀8匹・♂4匹導入し、寄生蜂は6~7週目に♀8匹・♂4匹、8週目に♀4匹・♂2匹導入し、以後は豆更新と個体数算定だけを続けた。ヨツモンはアズキでの生育がアズキゾウよりも数日間遅いので、アズキ比の高い条件ではアズキゾウが多数を占めた。また、同胞種はアズキでは寄生がほとんどできなかった。一方、ブラックアイ豆では宿主2種の生育速度は同程度で、AZ:BL=2:8条件区ではアズキゾウとヨツモンの上下変動が見られ、寄生蜂の捕食によって宿主2種の密度は低く維持され、3者系の維持がある程度続いた。


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