| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-096 (Poster presentation)

森林流域におけるミネトワダカワゲラ個体群の空間分布特性:攪乱履歴と水系ネットワーク構造との関係の把握

大平充*,渡邉祐介,境優,五味高志(農工大・農)

河川源流域では土石流の発生による自然的な攪乱に加え、森林伐採に伴う餌資源や生息場の改変といった人為的攪乱が河川の個体群に影響を与える。このような攪乱後の個体群の回復には、樹状の水系ネットワークを通した他の支流からの移入が重要な役割を果たし、源流(枝)間が直接合流する場合と源流が直接次数の高い流れ(幹)に合流する場合のように、源流間の連結性の差異は個体群の回復を左右する。源流部に分布するミネトワダカワゲラScopura montanaは、成熟までに3~4年と長い期間を要し、上陸後の成虫期も翅を持たず飛翔能力がない。このため、上記のような集水域の攪乱や源流間の連結性が本種の分布に影響している可能性がある。そこで、土石流による自然的攪乱および森林伐採による人為的攪乱の履歴と、その後の移入・定着に影響を与える水系ネットワーク上の位置的条件がミネトワダカワゲラ個体群の分布への影響を検証した。

群馬県みどり市に位置する約400haの森林流域において、2013年9月および12月に一次谷を中心にサンプリングを行った。本調査地は人工林―天然林、異なる林齢の森林がモザイク状に分布し、これまでの伐採および植栽の履歴が記録されている。また、航空写真および地形図を用いた土石流発生の判読を行った。そして、ミネトワダカワゲラの在―不在を応答変数、森林伐採や土石流発生の有無や経過年数、他の源流との連結性に関する変数を説明変数とした統計モデルにより、説明変数の寄与を検討した。

解析の結果、個体群の在―不在に対し林齢および流入河川の次数との関連が見られ、森林伐採後の経過時間の長さおよび他の源流との連結性はミネトワダカワゲラの在―不在に影響していることが示唆された。このことから、次数の高い河川と合流する源流域では、森林伐採による負の影響を受けやすいことが考えられた。


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