| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-124 (Poster presentation)

外生菌根菌を接種したカシ実生を用いた造林放棄地の緑化

*香山雅純 (国際農研),山中高史 (森林総研)

近年増加している人工林の伐採によって発生した再造林放棄地において、郷土樹種を用いた生態系修復が行われている。カシ類は、九州の常緑広葉樹林における主要な郷土樹種であり、根系は外生菌根菌と呼ばれるキノコと共生関係を結んでいる。2009年に実験室内で実施した、カシ類実生に外生菌根菌を接種した試験では、熊本県南部の再造林放棄地から採取した貧栄養な裸地土壌でも顕著な成長促進効果がみられた。そこで、実際の野外の造林放棄地においても、外生菌根菌を接種したカシ実生の成長が促進されるかを検討した。

本実験では、2009年の実験でも外生菌根菌の接種により成長が促進されたアラカシとウラジロガシを対象とした。種子は九州の照葉樹林で採取し、発芽させた後に九州の照葉樹林で子実体を採取して単離・培養したツチグリとニセショウロの培養液を用いて接種を行った。なお、接種を行わない実生も準備した。実生を10ヶ月育成後、2012年4月に熊本県南部の再造林放棄地に設けた試験地に移植した。移植後は、定期的に試験地の管理を行い、2013年10月に全実生のサンプリングを行った。サンプリングを行った実生は、外生菌根菌の感染率を測定した。その後器官ごとに分けて乾燥させた後に、各器官の乾重量と植物体中の養分濃度を測定した。

植栽後の総乾重量は、いずれの処理区も植栽前より乾重量は増加した。アラカシ・ウラジロガシとも外生菌根菌を接種した個体は、非接種個体より有意に重かった。植栽後の外生菌根菌接種個体の感染率は、ニセショウロ接種のウラジロガシで増加し、ツチグリ接種のアラカシで減少した。非接種個体は植栽前にはほとんど外生菌根菌は感染していなかったが、植栽後の感染率はいずれも増加した。実生の総乾重量と外生菌根菌の感染率との間には、両樹種とも正の相関があり、外生菌根菌の高い感染率が成長促進につながったと考えられた。


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