| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-133 (Poster presentation)

分布推定モデルにおけるスコア化変数の使用

*平山 寛之(九大・理・生態), 粕谷 英一(九大・理・生態)

生物の保全のためにはその生物の分布を把握する必要がある。現実にはすべて範囲で分布調査を行うことは不可能であり、分布推定モデルが広く利用される。分布推定モデルにより、特定の調査地点の気候や地形、土地利用などの環境情報の基礎データから実際には調査していない地点であっても潜在的なハビタットを推定し、その保護に活用することができる。近年、分布推定モデルは目覚ましく発展し、様々な手法が提案されている。正確な分布を推定するためには精度の高い基礎データの使用が必要である。しかし、面積など連続的尺度で計測可能な基礎データであっても、計測の困難さからスコアのような情報量の低い順序尺度あるいは名義尺度で記録され、使用されることがある。こうした基礎データの情報量の低下は予測精度の低下をもたらすことが明らかになっている。しかし、連続値をスコアとして記録する場合に、元データのどの範囲をそれぞれのスコアに割り当てるかによって、各スコアの頻度分布は変化する。それゆえ、スコアの範囲の設定の違いによって、予測精度への影響が変化する可能性がある。本講演では連続的尺度で得られた基礎データを3通りの方法で順序尺度のスコアに変換し、情報量を人為的に低下させ、予測精度がどのように変化するか調査した。3つの方法とは、(1)等間隔変換:元データの最小値と最大値の間を等間隔にわけスコアに変換、(2)ゼロ抽出等間隔変換:元データの0は最少スコアに変換し、残りの0より大きい範囲を等間隔変換、(3)等量変換:各スコアに含まれる元データの数(地点数)が等しくなるように変換、である。その結果、(3)等量変換で予測精度の低下度合いが最も小さく、正確な予測をする上では各スコアに含まれる地点数が等しくなるような範囲設定でのスコアの使用が有効であると考えられる。


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