| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-136 (Poster presentation)

マレーシア・ジョホール海峡に出現するジュゴンの生育環境モデル

伊藤修平(首都大・都市環境),保坂哲朗(首都大・都市環境),Nurul Nadiah Yahya(マレーシア工科大・INSTeG),Syarifuddin Misbari(マレーシア工科大・INSTeG),Mazlan Hashim(マレーシア工科大・INSTeG),*沼田真也(首都大・都市環境)

ジュゴン(Dugong dugon )は沿岸海域に生育する草食哺乳類である。現在、世界的に多くの沿岸海域では周辺の都市化や漁獲圧などの高まりによる影響が見られ、ジュゴンは減少傾向にあり、世界自然保護連合により危急種に指定されている。本研究は、マレーシアで第二の都市であるジョホール州とシンガポールに囲まれたジョホール海峡に生育するジュゴンに注目し、都市近郊に生息するジュゴンの生息及び生育環境に関する調査を行った。具体的にはジョホール海峡に定期的に漁に出る漁師31人に聞き取り調査を実施し、ジュゴンの目撃情報と沿岸利用状況を整理した。また、ジュゴンの生態に係わると考えられる沿岸海域の環境要因(海草バイオマス量、水深、漁獲圧)を評価した。その結果、2000年代に目撃数は減少したが、2010年以降は増加していたことが明らかになった。また、年代ごとに目撃される地域は異なり、これらの差異は2000年代に行われた沿岸地域における開発行為が関係しているものと考えられた。続いて、ジュゴンの目撃回数を目的変数とし、海草量、水深、漁業圧を説明変数とするGLM(一般化線形モデル)を用いてジュゴンの目撃頻度を予測するモデルを作成した。その結果、水深が深い場所、漁業圧が高い場所でジュゴンの目撃頻度は有意に高い傾向にあったが、海草量に有意な効果は見られなかった。そのため、経験的に目撃情報が多いとされている場所に加えて、今回モデルで目撃頻度が多いと推定されたエリアについても、適切に海域の環境を管理する必要があるだろう。


日本生態学会