| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-139 (Poster presentation)

全国スケールでの陸生鳥類の相補性解析から明らかになったオープンランドの保全上の重要性

*直江将司(東大・農), 赤坂宗光(東京農工大・農), 山北剛久(JAMSTEC), 植田睦之(バードリサーチ), 宮下 直(東大・農)

人間活動による生物多様性の損失を抑えるために、世界目標として愛知ターゲットが設置された。その目標のひとつは2020年までに陸域の17%以上を保護することである。全球スケールでの保全計画から、陸域17%の保護区設置で多くの植物や脊椎動物の分布域を抑えられることが分かっている。全球スケールでの結果は全体的な保全の指針になるが、保全活動の実行にあたっては国・地域スケールでの計画策定が必要になる。なぜなら国・地域によって保全計画に影響する社会的・生物的要因が大きく異なる為である。しかし、国・地域スケールで陸域17%の保護を目標とした計画策定を行った研究はほとんどない。そこで本研究では、日本の陸域17%を保護することを目標として、陸鳥183種についてニッチモデリングによる分布予測に基づいた相補性解析を行い、保護区候補地を特定した。鳥類データは、環境省自然環境保全基礎調査による在のみデータを用いた。

解析から、陸域17%を保護する上で重要な保護区候補地を特定できた。保護区候補地はオープンランド率(農地、草地率の合計)が高い場所、景観多様度が高い場所、平均気温が低い場所に多かった。また保護区候補地により希少種、特にオープンランドに生息する希少種の保護される面積が大幅に増加することが分かった。本研究からオープンランドの保全上の重要性が明らかになったが、地価が極めて高い日本において、経済活動が活発なオープンランドの買い上げは事実上不可能である。またオープンランドの多くは農業によって維持されている。そのためオープンランドの保全には、国立公園の設置などに基づく経済活動の規制ではなく、民間や地方自治体が主導する自然再生事業や環境保全型農業の支援などが有効と考えられる。


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