| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PA3-160 (Poster presentation)

絶滅危惧種カワバタモロコの積極的保全におけるビオトープの有効性

*鈴木規慈(三重大院生資), 畠山絵美(豊橋市), 牛島釈広(ラーゴ), 阿部司(ラーゴ), 金尾滋史(琵琶博)

コイ科の淡水魚カワバタモロコ(環境省RL 絶滅危惧IB類)の積極的な保全に向けて,企業のビオトープを用いて個体群の再導入実験を実施した.

実験は,(株)ブリヂストン彦根工場内のコンクリート調整池を改修したビオトープで行った.カワバタモロコの繁殖期前である2011年5月に繁殖親魚(雌雄各25個体)を導入し,その後の個体群動態について調査した.

繁殖親魚の導入後,同年夏期に繁殖が確認された.カワバタモロコは,改修時に造成された水辺移行帯,および設置された植生ロールを繁殖場所として利用しており,2012年5月には2987.8 ± 283.9個体に増加した.一方,同ビオトープでは夏期の水位の低下および導入水の水質の影響により,2013年5月には436.8 ± 68.8個体まで減少した.その後の水質改善等によって,同年の夏期には個体数が回復していることが推察された.なお,これらの課題は,(株)ブリヂストンによって新たに掘削された井戸水の補充により解決している.

本研究から,企業ビオトープにおいても環境整備によってカワバタモロコの域外保全地として機能することが明らかになった.安定的に個体群を維持するためには,管理手法等を整理し,関係者間で共有することが重要である.本発表では,以上の結果に基づき,今後の方向性についても議論する.


日本生態学会