| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB1-HS23 (Poster presentation)

サシバの渡りの謎に迫る I  サシバの秋の渡りには季節風で生じ る滑昇風が利用される!?

*藤田竜輝, *福本優希, *田中秀直 (愛媛県立南宇和高等学校自然科学部), 橋越清一 (愛媛県立南宇和高等学校自然科学部顧問)

サシバButastur inudicus は日本に繁殖のために来る夏鳥で,里山を代表するタカの1種である.本種の渡りは繁殖のための春の北上と越冬のための秋の南下があり,特に秋の渡りルートは日本海側からの中央ルートと太平洋側からの東ルートが知られている.

愛南町は四国における上記の2つのルートの飛び出し口があり,1990年より渡りの調査が行われている.そこで,中央ルートの飛び出し口とされている由良半島における本種の渡りについて興味をもったので,モデル実験を行い,いくらかの知見を得たので報告する.

まず,モデル(1/1,000)を用いた風洞実験を行い,季節風によって起こる滑昇風を利用して高度をかせぐ場合の最適な風速が約4.3m/s,最高点のできる場所は山頂の約3倍の高さであることがわかった.これを実際の渡り調査データと比較したところ,風力3(風速は3.3~5.3m/s)やタカ柱の位置がほぼ一致することがわかった.次に,サーマルについて実験を行い,陸地の場合も海上の場合も約2~3℃の差が生じると,サーマルが発生することを見出した.この結果より,本種の秋の渡りの際には季節風で生じる滑昇風や陸地あるいは海上の場合もサーマルを利用し,高度を上げて省エネで飛んでいることが分かった.


日本生態学会