| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-011 (Poster presentation)

土壌リン吸着特性の異なる熱帯降雨林生態系における土壌微生物のリン獲得活性

*池田千紘,北山兼弘 (京大・農・森林生態)

鉱物起源であるリンは、土壌風化に伴いその総量と生物可給態の割合が減少する。土壌風化が進行した熱帯低地降雨林ではリンが欠乏し、純一次生産や有機物分解を制限することが知られている。しかし、そうした土壌上においても高い純一次生産速度が維持されており、これはリン欠乏に対する土壌微生物も含んだ様々な生物の適応の結果と考えられる。森林生態系における可給態リンは、生物に利用され循環する経路と、土壌鉱物に強く吸着され、その後長い時間を経て無効な吸蔵態となる経路の2つに分かれる。見かけのリン循環量は、土壌鉱物の潜在的吸着能(地球化学的シンク)とそれに拮抗する土壌微生物の吸収能(生物学的シンク)のバランスに依存している可能性がある。

本研究ではリン酸吸着能が大きく異なる土壌を比較することにより、土壌のリン酸吸着能と微生物のリン酸吸収能あるいは保持能にどのような関係が見られるのかを明らかにした。調査地はボルネオ島サバ州における母岩の異なる5つの熱帯低地林とし(蛇紋岩、第三紀堆積岩2か所、第四紀火山岩、砂岩)、各森林から表層5cmの土壌を採集した。クロロホルム添加により微生物活性を抑えた湿土にリン酸カリウムを過剰に加えリン酸を固定させた後、Bray I溶液を加えて振とうし、それで回収できない無機態リン画分を吸着量と定義した。吸着率は蛇紋岩>火山岩≧堆積岩>砂岩の順に低下した。また、同様に湿土にリン酸カリウム溶液を加えて25℃の微生物活性下において培養し、これをクロロホルム燻蒸することによって抽出されたリン酸と溶存有機態炭素から、微生物のリン酸吸収量とバイオマス炭素量変化を推定した。

本発表では、異なる吸着能を持つ熱帯低地林における、リン獲得と保持の点から見た土壌微生物の生態系機能について考察する。


日本生態学会