| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-018 (Poster presentation)

蛇紋地・黄柳野における樹木群集の種組成に立地環境が与える影響

*樋口恵吾(名大院・生命農), 松下通也(秋田県立大・生物資源), 渡辺洋一(名大院・生命農), 中川弥智子(名大院・生命農)

蛇紋岩はNiやMgを多く含む超塩基性岩で、その土壌は貧栄養となり低木群集が成立することが知られている。蛇紋岩が点在している愛知県新城市黄柳野地域では、蛇紋岩地に多く生育するツゲやジングウツツジの他に、海辺に多いウバメガシや暖温帯二次林で見られるようなサカキやソヨゴが狭い範囲に混在しており、特異な樹木群集が見られる。そこで本研究では、特に土壌養分などの土壌環境に注目して、樹木群集の種組成を決定する要因を明らかにすることを目的とした。

2011年に設置した150m×200mの範囲をカバーする50m間隔の格子状トランセクト内の5m×5mのコドラート(合計128個、3200m2)にて野外調査を行った。野外調査ではDBH≥1cmの木本樹種を対象とし、コドラート毎に土壌を採取し化学分析を行った。解析には空間自己相関を考慮した構造方程式モデルを用いて、説明変数には、Ni濃度、Ca/Mg比、CN比、土壌体積含水率、pH、比高(コドラート間の標高差)、各コドラートの平均DBHを用いた。また、応答変数は各コドラートにおける樹木幹数とし、幹密度上位8種の樹木幹数に対しても、樹種別にそれぞれの要因が与える影響について構造方程式モデルを用いて分析した。

野外調査の結果、生存幹は合計3872幹、32科46属56種が出現した。また、化学分析の結果、Ni濃度は平均値が0.2±0.1µg/gとなり、pHは5.4±0.5であった。解析の結果、コドラート全体の幹数には平均DBHが負の影響を与えていた。また、各種の幹数を応答変数とした場合には、Ni濃度が蛇紋岩地でよく見られるツゲに正の影響を与え、逆にサカキやヒサカキといった暖温帯性の樹木には負の影響を与えており、Ni濃度が樹木群集の種組成に影響を与えていることが示唆された。


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