| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-042 (Poster presentation)

鉱山に自生するツルウメモドキ(Celastrus orbiculatus Thunb.)実生のFe, Al耐性への内生菌の関与

*江並 一成,長田 賢志,山路 恵子 (筑波大学大学院・生命環境)

ツルウメモドキには水・光ストレス耐性の報告があるが,重金属・Alストレス耐性については知見がない.調査地とした鉱山跡地は,高濃度の重金属及びAlが土壌中に溶出し,植物の生長に悪影響を及ぼす環境となっている.しかし上記のような環境で,ツルウメモドキ実生の自生が確認されており,本実生には重金属・Al耐性の可能性があると考えられた.また近年,植物体内に生息する内生菌が植物のストレス耐性の増加の報告があることから,本研究では内生菌と実生の重金属・Alストレス耐性の関連性の解明を目的とした.

調査地において約1年間当年生実生の生残率を観察した結果,約20%であった.生残実生の重金属・Al濃度は,Fe, Alが実生の全部位で,Cu, Niが根で高濃度に含まれ,実生の産生する物質が重金属・Al解毒機構に関与すると考えられた.実生の解毒物質の分析の結果,胚軸・根にトリテルペノイドであるcelastrolを高濃度に含むことが確認された.次にcelastrolを含む胚軸・根抽出物を用いてFe, Al錯体形成試験を行った結果,活性が確認でき,Fe, Al解毒機構へのcelastrolの関与が示唆された.その後,採取した胚軸から内生糸状菌を分離した結果,2種の菌(Ye株,Phomopsis株)が高頻度に分離された.2種を用いてFe, Al錯体形成物質産生試験を行った結果,Ye株にFe, Al錯体形成物質の産生能が確認され,植物体内で解毒物質を産生することにより解毒機構に寄与すると推測された.Phomopsis株は,既往の研究報告から解毒物質の産生誘導があるため,解毒物質産生誘導による寄与が推測された.


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