| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-043 (Poster presentation)

鉱山跡地に自生するススキ(Miscanthus sinensis Andersson)のAl耐性に関与する化合物の探索

*春間俊克,長田賢志,山路恵子(筑波大学大学院・生命環境)

ススキは原野などの酸性土壌においても優占種となりうる種であり、そのような土壌では交換態Alが植物毒性を示すことが知られている。2012年8月に鉱山跡地から採取した土壌pH(H2O)を測定した結果、pH(H2O)4.17±0.02の酸性土壌であった。そこで、同鉱山跡地に自生するススキに含まれるAl濃度を測定したところ、根に比較的高濃度のAlを蓄積していたため、Al解毒機構を有することが示唆された。また、採取したススキ根部を抽出し、HPLC及びGC/MSに供したところ、クロロゲン酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸と考えられる物質が検出された。いずれも植物体内でAlと錯体を形成すると考えられ、ススキのAl解毒機構に寄与する可能性が示唆された。室内実験として、0 µM、20 µM、100 µM、300 µMのAlを添加した水耕液を用いてススキ実生を14日間水耕培養し、ススキ実生に対するAl毒性を試験行ったが、実生の生育段階、根長、含水率、新鮮重量と乾燥重量においてAl濃度による有意差がなかったことから、ススキはAl耐性を有することが確認された。今後、より高濃度のAlを添加した水耕液を用いて毒性試験を行い、試験に供したススキ実生の根抽出物の定性、定量を行い、Al濃度とAl解毒物質産生量との相関を明らかにしたいと考えている。一方Alには有用元素としての一面を持つという報告があり、ススキが積極的にAlを吸収している可能性がある。今後、同鉱山跡地から採取した土壌の含有有害重金属にも着目し、Al添加・非添加の処理区間における重金属毒性の発現の差を比較することで、ススキに対するAlの有用性を確認したいと考えている。


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