| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-064 (Poster presentation)

ササの小面積単独ジェネットの開花において実生更新は可能なのか

*大倉知夏(秋田県立大院),松下通也,井上みずき,蒔田明史(秋田県立大・生物資源)

ササは一斉開花のほかに小面積での開花がよく観察される。ササの特異的な開花習性がどのように発達したのかを知るためには、こうした小面積開花が更新に寄与しているかどうかを明らかにすることも必要である。しかし、実生の定着を確認した研究例は殆どない。そこで、本研究では単独ジェネットが開花したクマイザサの小面積開花地で、多数の実生が発生した場所に遭遇したので、枯死後2年間の実生動態の追跡を行い、実生発生数や生存に影響する要因(遺伝的要因や周囲の環境条件)について明らかにし、実生更新の可能性を検証した。

調査地に2×2mの実生プロットを設置し(n=38)、開花稈密度、推定種子生産量、土壌水分と開空度の測定を行った。また、プロット内のササ全実生の自然高を測定し、遺伝解析用試料を採取した。翌年生死判別を行い、自然高と稈長、稈数とシュート数を測定した。さらに、採取した試料をSSR多型解析し、遺伝子型を決定して個体のヘテロ接合度を算出した。以上を説明変数とし、プロットごとの初年度実生本数をGLM、実生の初年度の自然高と実生生存をGLMMで解析した。

実生発生初年度に23プロットから、計547個体(3~81個体/ 4m2)の実生が確認された。翌年には14プロットで133個体(1~34個体/ 4m2)に減少し、生存率は24.3%だった。自然高は、初年度が平均4.6cm、2年目は平均7.1cmで、個体のヘテロ接合度は平均0.507であった。初年度実生本数に影響する要因として、推定種子生産量が正、土壌水分が負の影響を及ぼしていた。自然高には土壌水分、生存には自然高がそれぞれ正の影響を及ぼしていたが、いずれのモデルでも個体のヘテロ接合度の影響は認められなかった。これらの結果から、小面積開花でも更新に成功する場合がある可能性が示唆された。


日本生態学会