| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-075 (Poster presentation)

開放型チャンバーによる温暖化実験がコナラの繁殖に与える影響

*中村こずえ(鳥大院・農),三島大(鳥大院・農),佐野淳之(鳥大・農)

地球温暖化にともない、温度上昇に対する生態系の応答を明らかにする研究が求められている。温度や降水量などの気候の変化は、花の発達や受粉、種子の成熟に影響を与える。それらの繁殖過程は樹木の樹冠で集中して行われているため、温度上昇に対する樹木の繁殖の応答を知るためには、樹冠における実験が必要である。しかし、樹冠へのアクセスが困難であるため、実際の森林内で樹冠における研究はほとんどない。そこで、温度上昇がコナラの繁殖に与える影響を明らかにすることを目的とし、林冠観測用ジャングルジム内のコナラ3個体の樹冠に、温暖化を想定したOpen Top Canopy Chamber(以下OTCCと記述)を設置して実験を行った。

OTCC内とOTCC外(以下controlと記述)の対象枝のシュート数と雄花序数および雌花数を数え、雄花序は長さと乾燥重量を計測した。各処理区の対象枝の着生種子数を2012年は6~10月、 2013年は5~10月まで約2週間に1度数えた。

OTCC内のシュート当りの雄花序数と長さおよび乾燥重量が増加し、シュート当りの雌花数が減少した。したがって、雄花序と雌花の花芽分化および花芽成長の温度特性は異なると考えられる。また、温度上昇は花芽分化と花芽成長に影響を与えることによって、種子生産数に影響を及ぼすと考えられる。コナラ種子の発芽能力があるといわれる9月中旬の着生種子率を成熟率とすると、豊作であった2012年と並作であった2013年の両年でOTCCとcontrolで明確な違いはみられなかった。凶作であった2011年に行った同様の温暖化実験では、controlの成熟率が3個体中2個体で0 %であったが、OTCCにおいてcontrolより成熟率の増加がみられた。これらのことより、凶作年において花粉管の伸長に対する温度上昇の感受性が高い可能性が示唆された。


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