| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-094 (Poster presentation)

ヒサカキの花の形態的特徴と訪花昆虫群集における性差

*王けい,戸丸信弘,中川弥智子(名大院生命農)

固着性である種子植物の有性繁殖過程では、花粉による遺伝子の移動に、風、水、動物といった花粉媒介者が欠かせない。より効率的に花粉媒介者を誘引するためには、花の量、形、色、香り、蜜量、その糖度などの花の形態的特徴が重要であると考えられる。また、花粉媒介者の種組成や個体数は、雌性繁殖成功に影響を及ぼすかもしれない。不完全雌雄異株低木ヒサカキを材料としたこれまでの研究より、雌個体の雌性繁殖成功は両性個体のものより高いことを明らかにした。本研究では、花の形態的特徴や訪花昆虫群集における性差が雌性繁殖成功に関係している可能性を検討した。

調査は、2011年3月に名古屋大学の東山キャンパスに広がる二次林の3地点で行った。ヒサカキの雄花、雌花、両性花への訪花昆虫を採取し、訪花昆虫相とその個体数を調べたところ、雌花と両性花への訪花昆虫の数がほぼ同じであったのに対し、雄花への訪花昆虫はその約半分と少なかった。また、雌花への訪花昆虫ではハエ類が多く、両性花への訪花昆虫ではアザミウマが多かった。アザミウマは一般的に移動能力が低いうえ、ヒサカキの両性花内に産卵し花を食害することが報告されているため、両性個体の雌性繁殖成功に影響を及ばす可能性がある。開花量は性によって有意に異なり、雄個体、雌個体、両性個体の順に多かった。また、雌花は杯形であったのに対し、雄花と両性花は鐘形であるうえ、花冠筒がより長かったため、両性花内にハエ類は入りにくいことが考えられる。さらに、雌花の柱頭分枝数は両性花より多く、より高い花粉の受容性をもつ可能性があるため、雌性繁殖成功に有利なのかもしれない。一方、蜜量と糖度では両性花と雌花の間に差が認められなかった。


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