| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-098 (Poster presentation)

ミズキ果実を利用する動物相とその種子散布バターン: フンと種子の遺伝解析

山崎良啓(京大院農),直江将司(東大院農),正木隆(森林総研),井鷺裕司(京大院農)

液果樹木の種子散布は、多様な分類群の果実食動物によってなされる。それぞれの果実食動物は、その生態や生理が異なり、そのため種子散布への貢献度も異なると考えられる。そこで、本研究では、液果樹木ミズキ(Swida controversa)を対象にして、主要な種子散布者である哺乳類と鳥類の種子散布パターンの比較を行った。

鳥類のフン(2009‐2013年)と哺乳類のフン(アナグマおよびタヌキ、2013年)内に含まれるミズキ種子を、小川学術参考林(茨城県北茨城市)においてサンプリングした。それらの種子からDNAを抽出し、SSR 6座の遺伝子型を周辺結実木と比較することで、種子散布距離を推定した。また、2011‐2013年サンプリングした鳥散布種子については、フンから鳥類DNAを抽出しDNAバーコーディング領域であるmtDNA CO1領域の塩基配列を決定することで、散布者鳥類のを特定した。

種子散布距離の平均値および標準偏差は、鳥類13±32 m (N =383)、アナグマ122±32 m (N =93)、タヌキ145±91 m (N =22)であった。DNAバーコーディングから6分類群の鳥類 (アオバト、シロハラ・マミチャジナイ、トラツグミ、ツグミ、アオゲラ、キビタキ)が特定されたが、これらの散布者の間に有意な散布距離の差は検出されなかった。

以上のことより、鳥類に比べ哺乳類による種子散布距離は長いことが明らかになった。哺乳類が、液果樹木の世代更新や遺伝子流動に重要な役割を果たしていることが考えられる。


日本生態学会