| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-120 (Poster presentation)

屋久島におけるサワガニによるヤッコソウ花粉の摂食

*三原 菜美(鳥取県博),川口 利奈,矢原 徹一(九大・理)

花粉は昆虫をはじめ、鳥類や哺乳類などの動物に餌資源として利用されている。本研究では新たな花粉食の事例として、サワガニによるヤッコソウ花粉の摂食について報告する。サワガニは本州から屋久島まで分布する雑食の淡水性カニである。ヤッコソウは日本では高知から琉球列島まで分布し、林床から2-3cmの高さに花をつける全寄生植物である。ヤッコソウの花は雄性先熟で、雄期の終わりに帽子型の葯が外れ、その下から柱頭が露出して雌期となる。我々は屋久島町安房の照葉樹林内のヤッコソウ3集団について、2009、2011、2013の送粉期に花粉食者の調査を行った。ヤッコソウをデジタルカメラを用いて15秒間隔で撮影した結果、沢沿いの2集団では観察を行ったすべての年に複数のサワガニがヤッコソウを訪花していた。そこで、インターバル写真からサワガニが訪問した花の性別と、1花あたりの滞在時間(同じ花に連続して触れている写真数)を記録した。また、サワガニの採餌行動を観察するため、ビデオカメラで動画を撮影した。その結果、サワガニは葯(植物本体と繋がっているものと、外れたもの)、柱頭、蜜の溜まった鱗片葉の内部にはさみで触れ、その後それぞれ口器に運んでいた。1花あたりの滞在時間は、雄花で7.8±8.2(mean±SD、写真数)、雌花で6.0±5.8であり、雄花と雌花で有意な差はなかった。以上のことから、屋久島においてサワガニが近くに生息しているヤッコソウ集団は、送粉期にサワガニによって毎年訪花されることが明らかになった。また、サワガニは雄花の花粉だけでなく、花から外れた葯や、または柱頭や鱗片葉から分泌される蜜を餌として利用していることが示唆された。本研究は、カニ類による花粉食の初めての報告である。


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