| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-122 (Poster presentation)

ムラサキツメクサの開花戦略その1 花茎の屈曲に依存した開花面積の増加

*得田奈央子(筑波大・生物),鈴木瑞穂(筑波大・生物),横井智之(筑波大・生命環境),渡辺守(筑波大・生命環境)

多数の小花によって形成される総状花序では、花序内の小花は基部付近から上部に向かって徐々に開花してゆく。開花小花数の少ない初期段階では、開花した小花は花序の下部に位置し、上空からは発見しにくくなるのかもしれない。しかし、結実などの証拠により初期段階から訪花していることが明らかにされている。すなわち開花初期の小花であっても訪花昆虫を誘引する何らかの戦略をもっていると考えられる。ムラサキツメクサは、ひとつの株で多数の花序を生産し、開花した小花と開花直前の赤いつぼみが誘引刺激となっている。開花初期において、これらの小花は基部の周囲に偏在していることが明らかにされてきた。そこで本研究では、開花初期の小花を目立たせる手段として、①小花サイズを大きくする、②花茎を屈曲して開花した小花を上空に向けるという2つの仮説を立てて野外調査を行なった。花序の状態を、すべてつぼみであるステージⅠと色づいたつぼみをもつⅡ、開花した小花の割合によってⅢからⅣ、枯死した小花の割合でⅥからⅦと計7つのステージに分け、ⅢからⅤのステージを開花期間とした。開花期間中の各ステージで開花した小花の大きさに有意な差は無かったが、ステージⅢの時に花茎が最も強く屈曲していた。各開花ステージの花序を真上から見た時、赤く色づいていた面積は、ステージⅢの段階で全体の半分を占めていた。これらの結果から、本種は開花の初期段階では、花茎の屈曲によって基部付近で開花した小花と開花直前のつぼみが、花序の上部に位置するようにしていることが明らかになった。すなわちムラサキツメクサは、花茎屈曲によって開花初期から赤い「花」が花序に存在するように見せかけていたと考えられる。


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