| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-137 (Poster presentation)

大規模攪乱が山地河畔林に与えた影響とその後のヤナギ科樹種の初期定着過程

*新国可奈子(新大・自然研)・本間航介・崎尾均(新大・農)

平成23年7月新潟・福島豪雨は、山地や河川生態系に大きな影響を与えた。福島県伊南川において、この豪雨による大規模攪乱が森林構造や立地環境に及ぼした影響を解析し、攪乱後のヤナギ科樹木の更新について実生と萌芽の両面から定量的に調べた。攪乱後の山地河畔林は、比高の違いによって攪乱の強度が異なっていた。攪乱強度が大きい低比高の流路側は剥皮・倒伏などを受けた被害木が多く、林冠の開空率が高く、林床には大小の礫が堆積していた。攪乱強度が弱い高比高の中洲では、健全個体が多いため開空率が低く、草本層がパッチ上に残存し、砂質土壌が広がっていた。中洲には大型のデブリが多数堆積していたが、これらは流木が健全木や立ち枯れ木の間に引っかかって出来たものであった。当年性実生密度を目的変数としたGLMでは、比高が有為な正の相関を、草本被度と開空率が弱い負の相関を示した。低比高の流路側では夏の乾燥による枯死や、融雪洪水による実生の流出が起こったため、これがGLMに反映されたものだろう。萌芽の出現頻度は、剥皮率に伴って増加していたが、被害木や倒流木の幹から大量に発生した萌芽の多くは2年間の間に枯死した。一方、土壌に埋没した幹や枝から発生した萌芽は翌年も成長していた。以上のことから、今回の大規模攪乱は、伊南川の山地河畔林の林分構造、比高、基質などに劇的な変化をもたらしたとともに、実生の発芽サイトを大面積に形成し、萌芽による更新を誘発したことが示唆された。なかでも土壌に埋没した幹などからの萌芽は今後の山地河畔林の更新に貢献していくと推察される。


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