| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-004 (Poster presentation)

登山者はニホンジカの影響をどのように視ているか?

長池卓男(山梨県森林研)

ニホンジカが南アルプスの高山帯にまで出現し、植生へ影響を及ぼしており、このことは研究者や山小屋関係者の間では共通認識となっている。このような高山に関わる関係者の合意形成は、今後の対策を進める上での鍵となる。しかし、高山帯のニホンジカの問題に対して、登山者が現状や今後の対策に対してどの程度認識をしているかは全く把握されていない。そこで、2013年の7月の海の日および9月の秋分の日の3連休のそれぞれ2日間、北岳周辺の下山者を対象に、ニホンジカの植生への影響をどの程度認知しているかについてアンケート調査を行った。7月は171件、9月は128件(計299件)の回答が得られた。『南アルプスでニホンジカの影響があることについて、ご存じでしたか?』という設問に対しては、「知っていた」が111件(37%)、「知らなかった」が184件(62%)(無記入4件)であった。また、『今回歩かれて、ニホンジカの影響を見ましたか?』という設問に対しては、「見た」が52件(17%)、「見なかった・気がつかなかった」が244件(82%)(無記入3件)であった。性別で比較すると、「知っていた」「見た」と回答した率が男性で若干高かった。また登山歴でみると、登山歴が長いほど「知っていた」「見た」割合が高くなった。また、『現在どのような対策が採られているか』を尋ねたところ、「植生保護柵」が50%、「高山帯での捕獲」が11%であったが、『今後どのような対策が必要か』を尋ねたところ、「植生保護柵」が26%と低下し、「高山帯での捕獲」が23%と増加した。多くの登山者は、ニホンジカにより植生への影響が生じていることを認識していないことが明らかとなり、今後のニホンジカ対策への重要な「サポーター」となりうる登山者へ、ニホンジカ問題をどのように周知させるかが課題である。


日本生態学会