| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-017 (Poster presentation)

不耕起V溝直播水田の埋土種子集団の種組成

*伊藤浩二(金沢大・環日本海域環境研究セ), 中村浩二(金沢大・地域連携推進セ)

水稲の不耕起V溝直播農法(以降V溝農法)は、2000年頃から中部地域を中心に基盤整備後の水田地帯で普及が進んでいる、省力型水稲栽培法のひとつである。本農法は石川県珠洲市においては、①苗箱施薬処理(殺虫剤・殺菌剤)を行わず、入水前に非選択性除草剤を散布する、②入水時期が慣行移植栽培より1か月ほど遅れる、③中干しを行わない、④稲の収穫時期が慣行移植栽培より1か月ほど遅れるなど、慣行移植栽培とは異なる特徴を持つ。これまでの研究からV溝水田には慣行水田と異なる水田植物群落が成立することが分かってきたが、その生物多様性保全効果を評価するには、V溝農法で連作した場合の影響についても検討する必要がある。

そこで2008年からV溝農法が導入されている石川県珠洲市N地区において、2013年に農法履歴の異なる水田群を対象に植生と埋土種子集団の調査を行い、V溝農法の連作影響を検討した。まず4年間V溝農法を続けている5区画の水田(各3反歩)で、イネの播種後かつ入水直前の6月下旬に、表層5㎝の水田土壌を空間的なばらつきを考慮して採取し、施設に持ち帰り、埋土種子集団の撒きだし実験を行った。撒きだし条件として2つの水管理処理、すなわち湛水環境(水位+7㎝)あるいは中干し環境(水位-3㎝)を再現した。また連作年数の異なるV溝水田群と慣行水田群において、イネの刈取り前の9月下旬に水田内に複数方形区を設けて植生調査を行い、各々の水田植物群落の特徴を明らかにした。実験開始後以降、春の発芽適温時期を経験していないため、埋土種子集団フロラの全体像の把握には至っていないが、植生調査の結果と照らしながら、V溝農法の連作による水田植物群落の変化について議論を行った。


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