| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-041 (Poster presentation)

放棄地の経過年数と地表性甲虫相の関係

*山中聡,赤坂卓美,藪原佑樹,中村太士(北大・農)

近年の世界規模での人口減少は、様々な地域で人為的土地利用の衰退をもたらしている。特に、農耕地の放棄などの資源の過少利用(アンダーユース)は、従来の資源の過剰利用(オーバーユース)とは異なる影響を野生生物にもたらすことが予想される。今後起こりうる新たな国土の変化が野生生物に与える影響を把握することは、未来を視野にいれた長期的な土地利用管理ならびに生物多様性の保全管理を行うにあたって、重要な示唆を含むと考えられる。北海道釧路地域は、日本を代表する酪農地帯である。同地域は、かつて土地利用の大半を占めていた湿性草地を放牧地および採草地に転換させることにより発展してきたが、近年、離農および人口減少により放棄牧草地が増加している。本研究では、これらの放棄牧草地が、放棄からの経過年数により、過去の土地利用である湿性草地に類似した生息環境として遷移していくのか把握することを目的とした。対象種はオサムシ科甲虫とし、放棄牧草地でみられるオサムシ科甲虫の群集構造が、放棄からの経過年数(1-10年、11-20年、20年以上)に応じて湿性草地におけるオサムシの群集構造に類似していくのかについて検証を行った。オサムシ科甲虫は、2013年の7月と9月に、調査地域内の放棄牧草地、牧草地および湿性草地の全38地点において、ピットフォールトラップによって採集した。その結果、土地利用(放棄牧草地、採草地、湿性草地)によってオサムシ科甲虫の種数および個体数は異なった。また、オサムシ種をハビタットタイプ(森林性、開放地性、湿地性)に分類すると、土地利用ごとの出現率も異なった。本発表ではこれらの結果を元に、各土地利用および耕作放棄からの経過年数とオサムシ科甲虫群集の関係性について議論する。


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