| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-080 (Poster presentation)

チノービオトープによる地域の自然再生

村田匡史(株式会社チノー)

チノー ビオトープ フォレストは、チノーグループが環境問題に積極的に取組むシンボルとして株式会社チノーが藤岡事業所(群馬県藤岡市)敷地内に造成したビオトープで、2009年9月に造成を開始し、2011年4月に竣工した。

ビオトープの面積は約10,000㎡であり、この中に水深の浅い池、細い水路、比高の異なる丘を造成した。丘には近隣(高崎市観音山)で伐採予定だったコナラ林を下草や土壌も含めて移植し里山の植生を再生することを、また池にはもともと水田であった現地に埋もれているかつての土壌を掘り起し撒き出すことで湿地性植物の再生を目指している。

ビオトープでは群馬大学との協働調査を実施しており、造成前から植物相モニタリング調査を継続している。2013年度の調査では在来種99種、外来種55種の計154種が確認された。また、昨年度の調査では在来種100種、外来種47種の計147種が確認され、一昨年度の調査では在来種89種、外来種66種の計155種が確認されている。一昨年からの出現種数に大きな変化はないが、ビオトープ竣工直後(在来種53種、外来種22種の計75種)に比べると約2倍の種数が継続して確認されていることになる。

竣工直後(2011年)から絶滅危惧Ⅱ類のコギシギシ、一昨年度(2012年)から準絶滅危惧種のカワヂシャ・ミゾコウジュの生育が継続して確認されていることから、コナラ林の土壌を移植したことによって、土中に生残していた土壌シードバンクから発芽したものと考えられる。

また、計測制御メーカーである自社の製品を活用した『環境モニタリングシステム』を構築しており、ビオトープ内の気温・地温・湿度等の環境情報を計測し、ビオトープの管理に活用している。

学術的なデータと知見に基づく管理を継続することで、地域の生態系再生や絶滅危惧種の保全、生物多様性の保全を実現しつつあるチノービオトープの取組みを紹介する。


日本生態学会