| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-083 (Poster presentation)

温暖化に伴う藻場・サンゴ群集の対照的な地理分布変化

*熊谷直喜,山野博哉,杉原薫,河地正伸(国環研),寺田竜太(鹿大水産),須之部友基(海洋大館山),川瀬裕司(千葉中央海博),髙尾信太郎,藤井賢彦,山中康裕(北大院地球環境)

海洋生態系における群集動態は一般に陸上生態系と比べて時間スケールが小さい。このため温暖化の影響と見られる群集構造の変化も急速に進行している。例えば、海藻藻場の減少傾向は、国内温帯域の全海有り県で報告されている。一方、造礁サンゴ類は亜熱帯域で減少する代わりに、温帯域で増加する傾向がある。これらの現象について、地理的な分布の変化や北上傾向を捉えるためには、全国的な出現記録の収集・整備を進める必要がある。そこで本研究では、温帯の岩礁性浅海域の景観を構成する主要な種のうち、近年分布域の縮小または拡大が疑われる種について、過去から現在にかけての出現記録の収集と整備を行った。対象種は大型褐藻のうちカジメ、クロメ、アラメ、サガラメを温帯種、アントクメ、フタエモクを南方種とみなして選定し、生態学的・記載的文献のデータを収集した。その結果、九州、四国、紀伊半島、遠州灘、伊豆半島、房総半島の沿岸において、温帯種の分布縮小と南方種の分布拡大が起こっていることが分かった。また、先行研究で整備の進んでいる造礁サンゴ類の分布情報データと比較すると、同一海域で温帯種の海藻が減少しサンゴが増加する傾向が見られた。さらに、これらの文献データを用いた予備的な生息場所評価モデリングを行った。モデルの説明要因にはMODISの1 km 解像度の海面水温データや、日本水路協会の水深メッシュデータなどを使用し、種毎の出現確率推定モデルを作成した。先行して解析したカジメ・クロメでは、最暖月の平均水温のみによって現在の分布を説明できた。推定モデルの結果は、沿岸生態系の変化予測の基盤情報として役立てたい。


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