| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-085 (Poster presentation)

両生類の分布の規定要因:千葉県の例

*木寺法子,角谷拓,高村典子(国立環境研),小賀野大一(千葉県),長谷川雅美(東邦大・理)

多くの両生類は自然湿地の乏しい日本において、人間活動と密接なかかわりをもつ里地里山を主な生息場所として利用している。しかし近年の里地里山は、高齢化や過疎化という問題に直面しており、放棄による水田・森林面積の縮小化等、両生類にとって好適な環境が失われつつあるのが現状である。将来的な人口衰退が危惧される現在の日本において、さらなる環境改変の増加が予測されることから、土地利用の変化と生物の分布動態との関連性を明らかにし、適切な対策を講じることは急務といえる。

千葉県では、3次メッシュ(約1 X 1km)レベルでの詳細な両生類の分布データが蓄積されている。さらに千葉県は、首都圏に連なる人口密集地が存在する一方で、人口減少地も多数存在していることから、様々な条件下で将来の土地利用変化がどのように生物の分布に影響を与えるかを検討するのに好適な地域である。

そこで本研究では、両生類の将来的な分布動態の定量的な予測・評価に活用することを目指し、両生類の生息適地モデルを構築することを目的とした。解析には、千葉県全域で調査された13種の両生類における高精度な分布データを用いた。GISを用いて森林・水田・住宅地の被覆率、森林と水田の隣接長、および、降雨量や気温、傾斜角等の環境要因を3次メッシュ毎に算出し、これらを説明変数とする統計モデルを構築した。各種の分布をよく説明する環境要因の組み合わせは多様であったものの、多くの種で降水量が分布の規定要因として効果的に寄与していた。一方で、土地利用に関連する要因が分布に与える影響は概して小さかった。今後は、複数地点における長期的な個体数変動モニタリングデータと組み合わせることで、土地利用変化に対する両生類の応答をより詳細に明らかにする必要がある。


日本生態学会