| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-112 (Poster presentation)

放棄竹林の管理再開が土壌と水質に及ぼす影響

*小山里奈(京大院情報),赤石大輔(金沢大環日セ),木村一也,笠木哲也,中村浩二(金沢大里山里海プロジェクト)

近年、日本各地で拡大が問題となっている放棄モウソウチク林について、管理方法の違いが土壌と土壌水・地下水の水質に及ぼす影響を調査した。調査は石川県金沢市の金沢大学敷地内で実施し、小集水域単位で皆伐、強間伐、間伐、無伐採(対照区)の4段階の処理を行った。伐採は2009年11月に実施し、皆伐区では伐採以降も発筍した桿を除去した。各処理区において、表層鉱質土壌、土壌水もしくは地下水(30cm深・100cm深)、加えて対照区と間伐区では湧水も採取し、無機態窒素の現存量・濃度を測定した。調査は伐採前に2回実施し、伐採後は約3−4ヶ月に1回の頻度で行った。

土壌水・地下水および湧水の硝酸態窒素濃度は、伐採前にも処理区間で差があり、皆伐区と間伐区では硝酸態窒素濃度が高かった。さらに、この傾向は伐採後も保たれていた。いずれの処理区においても、伐採後に硝酸態窒素濃度の上昇は認められなかった。土壌中の無機態窒素現存量についても、伐採前に処理区間で差があった。無機態窒素の形態については、アンモニア態窒素がほとんどを占め、硝酸態窒素の比率は低かった。伐採強度に関わらず、伐採による土壌中の無機態窒素現存量の変化はほとんど見られなかった。

森林伐採が水質に及ぼす影響として、多くの場合、伐採後の流出窒素濃度の上昇が観察されているが、本研究で実施されたモウソウチク林の伐採強度の違いは土壌水・地下水および湧水の窒素濃度、また土壌の無機態窒素現存量に明らかな影響を及ぼさなかった。原因として、伐採後も残されたモウソウチクの地下茎と根、あるいは伐採直後に侵入してきた遷移初期種による窒素吸収が流亡を妨げたこと、竹林拡大前の土地利用の影響が残存していたことなどが推測される。


日本生態学会