| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-113 (Poster presentation)

森林生態系における食物連鎖経路を通じたジョロウグモへの放射性セシウムの移行

*綾部慈子, 金指努, 杉浦佑樹, 肘井直樹, 竹中千里(名古屋大・生命農)

2011年3月の福島第一原子力発電所爆発事故により放出され,その後森林地域に降下した放射性物質の,食物連鎖を通じての濃縮・拡散過程を明らかにするため,森林内に生息する捕食性節足動物の造網性クモとその下位栄養段階に属する節足動物を対象として,放射性セシウムの濃度を測定した。調査地は,発電所から北西33~37 kmにある福島県伊達郡川俣町内の渓流沿い (site PS, 33 km) ,および高台の二次林 (site ES, 37 km) の2箇所を設定し,2013年6月以降,飛翔性の節足動物を中心に採集を行った。また,10月には,地表から1~2 m高さの網上のジョロウグモを採集した。サンプルは,高純度ゲルマニウム半導体検出器を用いたガンマ線スペクトロメトリーを用いて測定し,Cs-134とCs-137濃度を算出した。その結果,Site PS, ESのジョロウグモにおけるCs-137濃度は,それぞれ2439.4 ± 1450.1,883.4 ± 371.6 (Bq kg-1 d.wt)であった。一方,Cs-134は不検出の個体が多かった。ジョロウグモの放射性Cs-137濃度は,2012年度と比べると約6割程度に低下しており,経過時間に伴う減衰予測よりも低い値となっていた。これらジョロウグモと下位栄養段階の節足動物の放射性Cs濃度をもとに,食物連鎖を通じての放射性物質の移行について考察する。


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