| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-120 (Poster presentation)

高知県のヒノキ林における林齢に伴う窒素利用様式の変化

*稲垣善之(森林総研)・酒井敦・宮本和樹(森林総研四国)

高知県のヒノキ林分において、同一林分を20年間観測し、林齢の変化に伴う窒素吸収量と葉、幹生産の関係を明らかにした。21年生から41年生における7つの時期(21-22、23-24、 25-27、28-30、31-32、39-41年生)において、樹冠葉量を求めた。樹冠葉量は、胸高直径、樹高、生枝下高を用いた相対成長式によって算出した。胸高直径と樹高から幹現存量を求めた。リタートラップで落葉量を求めた。落葉量に樹冠葉量の増分を加えて葉生産量とした。落葉窒素量、樹冠窒素の増分、幹成長の窒素増分を合計したものを窒素吸収量とした。葉と幹生産量の合計を窒素吸収量で割って窒素利用効率を算出した。葉量、葉生産量、幹生産量、窒素吸収速度、窒素利用効率の7つの時期における平均値はそれぞれ、8.5Mg ha-1、3.1 Mg ha-1 y-1、8.3 Mg ha-1 y-1、20.7 kg N ha-1 y-1、422 kg kgN-1であった。葉量、葉生産量、幹生産量、窒素吸収速度、窒素利用効率と林齢には有意な相関関係は認められなかった。窒素吸収量が大きいほど、葉生産量は大きく、樹冠葉量が大きい傾向が認められた。窒素吸収量と幹生産量には有意な相関は認められなかった。窒素吸収量が大きいほど窒素利用効率が低い傾向が認められた。以上の結果より、ヒノキの窒素利用様式は林齢に伴う明瞭な変動を示さないこと、ヒノキは窒素吸収量の少ない時期には窒素を効率的に利用して幹生産を維持することが示唆された。


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