| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-126 (Poster presentation)

冷温帯落葉広葉樹林における窒素無機化速度の空間分布ー樹木の生長および微生物活性との関係性ー

*吉竹彩子,吉竹晋平,飯村康夫,大塚俊之(岐阜大 流圏)

森林における窒素循環は、有機態窒素が土壌微生物によって無機化され、その一部が植物に栄養塩として吸収される経路を持つ。日本の森林の多くは、複雑な地形の山岳地帯に位置している。地形的に不均一な森林において無機態窒素量や窒素無機化速度がどのような空間分布をとるのかは、植物の生長を考えるうえで重要である。そこで本報は、1.複雑な地形内での無機態窒素量および窒素無機化速度の空間分布を明らかにし、2.窒素無機化速度と、樹木生長および微生物活性との関係性を評価することを目的とする。

調査サイトは、岐阜県の乗鞍岳南西斜面に位置する冷温帯落葉広葉樹林で、東西・南北100m x 100mある。全体的に東が高く西向きに傾斜し、谷がその中央を走る蹄型の地形が特徴的である。サイトは10m間隔で100個の小区画(10mx10m)に区分されており、5つの地形類型(谷、頂部、北・南・西斜面)に分類されている。各方形区内の2013年5月から11月の間の窒素無機化速度はレジンコア法により求めた。各方形区内の樹木の生長量は、2011年から2012年の間のバイオマス増加量から求めた。微生物活性の1つである微生物呼吸速度は、各方形区から回収した土壌を実験室内で赤外線ガスアナライザーを用いた通気法により測定した。

無機態窒素量の地形類型ごとの平均値は、硝酸態窒素が5月と11月ともに谷部で有意に高かった。アンモニア態窒素は西斜面と頂部(5月)、南斜面(11月)で有意に高かった。窒素無機化速度は、谷部が南斜面よりも有意に高かった。また、無機態窒素量と窒素無機化速度は地形の影響を受けつつも異なる空間分布を示した。これは地形以外の影響が考えられる。本報では、窒素無機化速度、樹木の生長量および微生物の呼吸活性の三者の相関関係について議論する。


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