| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB3-149 (Poster presentation)

冷温帯コナラ林における硬質菌の形態変化に伴うCO2放出量の変化

*日野沢祐作(早稲田大・教育),友常満利,(早稲田大・院・先進理工),小泉博(早稲田大・教育)

冷温帯コナラ林における硬質菌の形態変化に伴うCO2放出量の変化

日野沢祐作(早稲田大・教育),友常満利(早稲田大・院・先進理工),小泉博(早稲田大・教育)

きのこの中でも枯れ木に生える硬質菌は、特に制ガン作用など薬学的な観点からの研究が行われてきた。しかし、CWDの分解やそれに伴うCO2放出といた森林内での硬質菌の挙動に関する研究はほとんど行われていない。そこで本研究は硬質菌の形態変化に伴うCO2放出量の推定を行い、硬質菌の炭素動態について議論した。

長野県の軽井沢の冷温帯コナラ林において30m×30mのコドラートを作成し、7月~11月の期間で調査を行った。まず、きのこの形態変化(かさの開き具合の変化)とその条件を明らかにするために、定点カメラによる観察と環境条件の測定を行った。次にCO2放出量の推定のために通気法を用いて形態変化に伴う2パターンの温度-呼吸曲線を作成した。これらの結果から、月積算CO2放出量を推定した。

測定の結果、3時間以上の連続的な降雨、あるいは1~2時間以内に1.0ml以上の降雨のどちらかの条件を満した場合、きのこのかさが開くことが明らかになった。また温度-呼吸曲線は温度に対し指数関数的な近似曲線を描き、R10・R20で比較するとかさが開いている状態のCO2放出量の方がそれぞれ約7倍・約8倍高い数値を示した。さらに1か月単位のCO2放出量は8月に高く、11月が低い季節変化を示し、かさが開いている状態でのCO2放出量は全体の約8割を占めた。また降雨の影響を加味していない先行研究とCO2放出量の比較を行った場合、月平均積算CO2放出量は3倍も上回る結果となった。したがって、降雨が硬質菌の挙動に大きな影響を与え、CWDの分解に影響を与える可能性が示唆された。


日本生態学会