| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


一般講演(ポスター発表) PC2-019 (Poster presentation)

冷温帯シバ草原における温暖化操作実験 -根系動態の非破壊的観察-

*田波健太,墨野倉伸彦,友常満利 (早稲田大・院・先進理工), 吉竹晋平 (岐阜大・流圏セ), 小泉博 (早稲田大・教育)

草原生態系は陸域面積の約4割を占め、陸域の炭素循環を理解する上で非常に重要である。また根系の動態が特徴的であることから、温暖化に対する根系の応答を評価することは環境変動により生じる炭素収支の変化を予測することにもつながる。しかし、根系の動態を非破壊的に連続観察することは非常に難しく、特に草原での研究例は少ない。本研究は草原生態系において根系を非破壊的に観察する方法を確立すると共に、温暖化操作下での根系動態の変化を明らかにすることを目的とした。

実験は2012年および2013年の成長期間 (5月~11月)において、岐阜県乗鞍岳の冷温帯シバ草原で行った。0.8 m×1.2 mのシバ草原を6区画用意し、3区画を温暖化区、残りの3区画を対照区とした。温暖化区では赤外線ヒーターを地表から1.2 mの高さに設置し、地下2 cmの地温を対照区よりも2℃上昇させた。根系の動態を明らかにするために各区画には観察範囲 (15 cm×15 cm) が開閉するアクリル板を垂直に挿入した。月に一回の観察時には板の手前側を掘り起こして観察部を開き、土壌断面を直接デジタルカメラで撮影した。撮影した画像のうち、根系のみをトレースし、線を構成するピクセル数により根系の量を地下茎と細根に分けて評価した。

温暖化の効果を比較したところ、地下茎では差が見られず、観察期間を通じて成長を続けていた。一方、細根では温暖化区と対照区でその動態に差がみられた。即ち対照区では夏以降に細根の量は減少したのに対し、温暖化区では増加を続けた。2013年にはどちらの区でも夏以降に細根量は増加傾向を示した。温暖化による根系の季節変化への影響をより詳細に評価するには、成長量と枯死量の変化を分けて検討する必要があり、本発表ではそのことについても議論する。


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