| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S07-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

擬態現象を生物多様性創出・維持機構として解析する:ボルネオ熱帯雨林におけるアリ類垂直分布構造とアリグモ属のアソシエーション

*橋本佳明(兵県大・自然環境), 遠藤知二(神戸女学院・人間), 市岡孝朗, 片山元気(京大・人環), 兵藤不二夫(岡大・RCIS), 山﨑健史(鹿大・理工), 坂本広道(兵県大・環境)

演者は1995年から東南アジア熱帯林でアリ類のインベントリーを行ってきた.とくに,ボルネオ島・ランビルヒルズ国立公園では林冠クレーンやウオークウェイを使って樹冠層の調査が可能なことから,現時点で476種を超えるアリ類の生息を確認している.この膨大なアリ類多様性に対応するように,熱帯林ではアリ擬態者の高い多様性が見られる.たとえば,ハエトリグモ科アリグモ属(Myrmarachne)は日本に5種生息しているが,サバ・サラワク州から現時点で30種を確認している(ランビル 18種).このアリ擬態者の高い多様性は熱帯でのアリ類の極めて高い多様性を鋳型として創出されていると考え,モデルと擬態者群集の形態や種多様性の関連を探るため,演者らはアリ—アリ擬態クモ類を対象に2004年からボルネオやタイ国の熱帯林などで以下のような調査・研究を行ってきた.

1)森林タイプ,林床-中間—林冠層など,アリ群集構造の異なる場所でアリとアリ擬態クモ類のサンプリングを行い,両者の多様性構造の解析

2)デジタル画像認識技術を使って,同一場所で採集されたアリとアリ擬態グモ類間で形状,体色,体サイズの類似度判定を行い,モデル・アリ種の特定

3)アリ類とアリ擬態クモ類,非擬態クモ類の分布様式と共起パターンの解析

本発表では,ボルネオ島ダナムバレーの林床とランビルヒルズの林床,中間,林冠でのアリ類とアリグモ属の調査結果から,アリ擬態現象を巡る熱帯雨林・節足動物の群集構造と多様性がどこまで分かったかを報告する.


日本生態学会