| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


シンポジウム S14-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

マングース超低密度個体群の根絶技術開発

城ヶ原貴通(岡山理科大学),淺野 玄(岐阜大学),*山田文雄(森林総研)

特定外来生物の防除事業により低密度化したマングースの根絶には,捕獲効率低下や罠忌避個体(trap shy)の残存と在来種との混獲回避が課題となる.このため,とくに新たな防除方法の開発として,1)避妊ワクチン,2)簡易の侵入防止策,3)DNAによる種・性・個体判別,および4)混獲防止策の検討を行っている.避妊ワクチン開発では,標的外来種に特異的に繁殖抑制を誘発させるための研究を実施している.卵透明帯蛋白質を抗原とした避妊ワクチンの開発をめざしており,卵透明帯蛋白質遺伝子の部分的配列の解読に成功している.現在,卵透明帯蛋白質遺伝子の全配列の解読および抗原候補のリコンビナント蛋白による免疫実験を進めている.侵入防止簡易柵の開発では,構造物の形状を決定するため,マングースの基本的な運動能力を把握する試験を行なった.地面からの垂直跳躍距離は雌で86cm,雄で90cmであった.また,垂直な壁を駆け上る場合の垂直跳躍距離の測定では雄で90cmであった.DNAによる種・性・個体判別では,低密度状態での侵入防止効果の確認や,捕獲個体と残存個体の判別,個体群における繁殖個体(特に雌個体)を確認する手法として,ヘアトラップで採取した体毛ならびに捕殺罠(筒罠)捕獲個体を想定した腐敗組織(骨,被毛,糞)を用いた判別技術の開発を行っている.在来種との混獲防止技術開発では,改良型捕獲器である延長筒罠の混獲防止機能を飼育実験で実証している.改良型延長筒罠は従来型に比べて筒長が55mm長く,在来齧歯類の尾部を保護するガイドバーを増設した.トゲネズミは改良型罠にも従来型罠と同様の頻度で捕獲されたが,改良型で死亡や尾の欠損が起きることはなかった.また,改良型罠によるマングースの捕獲率の低下は認められなかった.環境研究総合推進費D1101「外来動物の根絶を目指した総合的防除手法の開発」で実施している.


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