| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T12-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

水生生物の移動分散モニタリングへの環境DNA技術の適用:流水環境における研究例と展望

*山中裕樹(龍谷大・理工), 源利文(神戸大・院発達), 櫻井翔(龍谷大・理工), 大垣寿々香(龍谷大・理工)

これまで、海や川、湖など様々な水域において環境DNAによる種の検出が行われてきた。ただし、既存の研究のほとんどは、調査地の「試料水中に」対象種のDNA断片が存在したことを示すのみで、調査地点に実際その種が生息しているかどうかを検討していない。検出されたDNA断片が「どこからやってきたのか」を明らかにすることは環境DNAによる生物の分布と移動のモニタリングを可能にするためには必須の課題である。

水域生態学では、検出されたDNA断片を放出した個体がその系内にいることがある程度保障されている溜池の様な水域から、水の動きが激しい大きな湖や外洋などのように、放出から検出までのDNAの動態が予測しにくい水域まで、様々な系を研究対象とする。我々はまず、水の動きが一方向の単純な系である河川に注目して研究を進めている。

これまでに淀川で行った魚類の遡上モニタリングでは、スズキ、ボラなど海から遡上してくる種の1年間にわたる河川内での移動を推定した。この研究では調査地点間の距離が6 – 10 km程度であるが、隣り合った地点間で在・不在の判定結果が異なる場合も散見され、上流から下流に水が移動しているという河川の環境下にあっても数km程度の空間解像度は得られる可能性が見えてきた。しかし、環境DNAによる移動分散モニタリング技術を確固たるものにするためには、生物から放出されたDNA断片の分解や拡散による減少の過程を明らかにする必要がある。本発表では流水環境下での環境DNA手法による種の検出例やその時空間的精度、分析の手間や経費的なコストにかかわる情報を概観し、技術的問題点を示す。また、課題を克服するための方策や、既存の技術レベルでどこまで利用できるかについての検討も行う。


日本生態学会