| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T15-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

根,茎,葉の水の流れやすさを測る —測定手法とそこからわかること—

種子田春彦(東大院・理)

植物は、土壌から吸収した水を根、茎、葉の維管束組織と柔組織を通して体の隅々にまで輸送する。輸送経路になる根、茎、葉では、その形態の違いを反映して、水の流れやすさと、道管や仮道管の内部に気泡が入って水の輸送が妨げられる通水阻害の起こりやすさが異なっており、こうした組織間の違いが水利用における種特性を生み出している。

水の流れやすさは、組織に掛かっている圧力差に対する時間当たりの流量で表される通水コンダクタンスで評価される。そこで、通水コンダクタンスの測定方法には、対象とする組織への適切な圧力のかけ方と流量の測定が重要になる。そして、根では、プレッシャーチャンバー法、非定常状態での高圧流速測定法(High pressure flow method)、茎では、Sperry 法、単一道管測定法、葉では、定常状態での高圧流速法、真空ポンプ法、蒸発散流法(Evaporative flux法)、吸水速度測定法(Rehydration kinetics method)などの方法が開発されてきた。以上の方法は、原理が単純であり、どれも自作が可能である。本講演では、これらの測定方法の長所や短所について紹介する。

最後に、木本の実生において根、茎、葉の通水コンダクタンスの解析例を紹介する。根、茎、葉では、根の通水コンダクタンスが特に低く、植物体内の流れを制限している可能性が示唆されている。演者らの測定から、根の流れにくい性質は、根の組織自体が茎や葉にくらべて特に流れにくいわけではなく、根の量が少ないからであることを明らかにした。


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