| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T16-3 (Lecture in Symposium/Workshop)

福島県只見町の決断~自然首都宣言からユネスコエコパークへの道

鈴木和次郎, 中野陽介(只見町), *酒井暁子(横浜国大院・環境情報)

福島県の西端に位置する只見町は、日本有数の豪雪地帯で一年のうち半年は雪の中にある。面積こそ約7万4千ヘクタールと広大だが、その90%以上は山林原野で、人口わずか4千6百名の田舎町である。戦後の只見川電源開発で、巨大な田子倉ダムと水力発電所を持つが、これと言った産業はなく、過疎化・高齢化が地域社会の衰退に拍車をかけている。 

そうした中で、只見町は平成の広域合併を選択せず、独自の町づくりに乗り出した。それは、これまで地域振興の大きな障害と考えられてきた豪雪とブナ林に代表される自然環境を拠り所にし、それに育まれた地域の伝統的な生活・文化・産業を守り、地域を発展させようと言うものである。その指針として、「第六次只見町地域振興計画」が町民参加で策定され、活動のスローガンとして「自然首都・只見宣言」が採択された。そしてこれらを具体化する包括的な手段として、只見町は、ユネスコエコパークを目指すことを戦略的に選択した。

只見ユネスコエコパークでは、5万ヘクタールにおよぶ原生的な自然環境とその生物多様性を保護、保全しつつ、そこでの環境や資源を持続可能な形で利活用し、もって地域の社会経済的な発展を目指す。只見町は、歴史的に見ると、焼畑を中心に、狩猟、採取、漁労、林業などを複合的な生業とし地域社会が成り立ってきた。こうした自然に依存した生活形態は、今日なお色濃くこの地域社会を特徴付けている。只見ユネスコエコパークでは、こうした伝統的な生活や地場産業を大切にし、地域の発展を模索する。またこうした取り組みは、只見地域の地域振興に留まらず、過疎と高齢化に直面する全国各地の山間地の多くの自治体に対し、地域活性化のモデルとして提示して行きたい。


日本生態学会