| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第61回全国大会 (2014年3月、広島) 講演要旨
ESJ61 Abstract


企画集会 T20-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

トランスクリプトーム・フェノロジーの観測と理解に向けて

永野惇(京大・生態研,JST・さきがけ)

これまで我々は、水田のイネを材料として、数百サンプルのトランスクリプトームデータ(全遺伝子の発現情報)と、気象データを合わせて解析してきた(Nagano et al. 2012 Cell)。その結果、体内時計、気温、光でイネの葉のトランスクリプトーム変動の大部分を説明できることなどが明らかになった。また、約3万ある遺伝子の大半に関して、非常に高い精度で発現を予測可能となった。さらに最近は、このアプローチを野生植物のフェノロジー研究に応用するため、必要な技術の解析を進めている。例えば、低コスト・ハイスループットなRNA-Seq法を確立などである。これによって、数百~数千サンプルのトランスクリプトームデータが現実的な費用・労力で取得可能となった。この低コスト・ハイスループットなRNA-Seq法を用いて、日本に自生する多年草であるハクサンハタザオ(Arabidopsis halleri)の自然集団から、ほぼ毎週、2年分、500サンプル以上のトランスクリプトームデータを得た。遺伝的にも、局所生育環境的にも不均一なサンプルであったにもかかわらず、発現に明瞭な季節性変動を示す遺伝子を多数、見出すことが出来た。多くの季節性変動遺伝子で、その変動パターンは2年間を通じて共通していた。発表では解析結果を紹介するとともに、今後のトランスクリプトーム・フェノロジー研究に必要な技術、それらを使って何が出来るか、を議論できればと思う。


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