| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-20 (Oral presentation)

環境DNA分析を用いた希少在来種と近縁外来種の流域スケール調査:京都府桂川のオオサンショウウオを例に

福本想(神戸大・発達,京大院・地球環境), 丑丸敦史, *源利文(神戸大院・人間発達環境)

外来種の侵入による在来希少種への影響を防ぐためには、外来種侵入の初期段階において両種の正確な分布を把握し、迅速に対策を講じる必要がある。しかし、両種が非常に近縁な場合、両種を形態から区別することが難しい場合も多い。近年、環境中のDNA情報を用いた大型生物の分布情報の把握法が開発され、様々な生物種に適用されている。本講演では、京都府の桂川水系におけるオオサンショウウオ(Andrias japonicus、以下在来種と呼ぶ)および近縁外来種であるチュウゴクオオサンショウウオ(A. davidianus、以下外来種と呼ぶ)を対象として、環境DNA分析手法を用いた生息域把握の取り組みについて報告する。2012年9月から2013年6月にかけて、桂川水系全域の37箇所からそれぞれ4回のサンプリングを行って、環境DNAサンプルを得た。環境DNAサンプル中の在来種および外来種のmtDNAをそれぞれに特異的なTaqman PCR法によって検出した。その結果、37箇所のサンプリングサイトのうち、在来種のDNAは25箇所、外来種のDNAは9箇所から検出された。外来種の検出されたエリアは、京都市などがこれまでに報告している外来種の侵入エリアと矛盾せず、環境DNA分析によって簡易に広域の調査が可能であることが示された。4回の調査の結果から、オオサンショウウオの環境DNA調査にあたっては、秋から冬にかけて3回の調査を行うことでより正確な分布情報を得ることができる事が示唆された。環境DNA分析と通常の捕獲調査を組み合わせることで外来種の侵入に対してより迅速な対応が可能となると考えられる。


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