| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) A1-23 (Oral presentation)

ネオニコチノイド系農薬の複数年施用が水田の節足動物におよぼす影響

*笠井 敦, 林 岳彦(国立環境研), 早坂大亮(近畿大農学部), 五箇公一(国立環境研)

EUがハナバチ類への影響を懸念し暫定的に2年間使用停止しているネオニコチノイド系殺虫剤のクロチアニジン,イミダクロプリドおよびチアメトキサム,およびフェニルピラゾール系殺虫剤のフィプロニルは,我が国でも水稲の育苗箱処理剤として多用されており,近年のアキアカネ減少との関係も指摘される.我が国における農薬の生態リスクはOECDテストガイドラインで指定された魚類・ミジンコ・藻類という3種の試験生物に対する急性毒性試験結果のみで評価され,実際の生態系における生物間相互作用はもとより,生物相の地域固有性や季節性,多様性による影響の現れ方の違いは一切考慮されていない.そこで我々は,農薬が実際に使用された場合に地域ごとにどのような生物多様性影響が生じるかを評価する手法として水田メソコズム試験を実施しており,特に育苗箱処理剤による水生生物群集に対する影響評価を進めている.本発表では,イミダクロプリド,クロチアニジンおよびフィプロニル等,国内外で生態影響が懸念されている浸透移行性殺虫剤のメソコズム試験の結果を報告する.これらの剤が環境中でどのような挙動を示し,どのような生物相に影響を及ぼすのかを解析し,農薬の生物多様性影響の課題とメソコズム試験の意義について議論したい.


日本生態学会