| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) B1-21 (Oral presentation)

南アルプスユネスコエコパーク(生物圏保存地域)の特徴と登録の意義

*若松伸彦(東京農大・南アルプス市専門員)・広瀬和弘(南アルプス市)・増澤武弘(静岡大)

ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)は生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的にUNESCOが開始した人間と生物圏計画の一事業である。現在、ユネスコエコパークの登録件数は119ヶ国631地域となっており、日本は7地域が登録されている。その中で、2014年に登録された南アルプスユネスコエコパークは国内で最も新しいユネスコエコパークである。本発表では、南アルプスユネスコエコパークの特徴を国内の他の登録地と比較しながら明らかにし、本地域がユネスコエコパークに登録された意義を検討することを目的とする。

南アルプスユネスコエコパークは国内最大面積のユネスコエコパークであり、人口も最多であった。また、国内7地域中4地域が概ね1町村内にエリア設定されていたが、南アルプスユネスコエコパークのエリアは3県10市町村に及んでいた。南アルプスは3000mを超える高山地域を有し、多数の生物固有種が存在している。高山地域の保全活動には周囲の市町村や団体の協力が必要不可欠であるが、車を利用しても周囲の市町村間の往来に6時間以上を要するケースも存在しており、連携が極めて困難な状況であった。周辺では南アルプスの自然保全に対する意識が高く、周辺市町村が連携して世界自然遺産登録を目指す取り組みを始めていた。しかし世界自然遺産登録の見通しが不透明であったことから、2011年より、南アルプスの自然環境保全と地域社会の発展を目指すユネスコエコパーク登録への取り組みを開始した。このように南アルプス地域にとってユネスコエコパークの登録は、地方市町村レベルの連携による山岳地域の自然環境保全が動機であることが明らかとなった。いま現在、南アルプスユネスコエコパークのエリア内のシカ食害や登山道保全などへの取り組みが開始されている。


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