| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) D1-26 (Oral presentation)

世界から見た我が国漁業資源の現況

*市野川桃子, 岡村 寛(中央水研)

世界の漁業資源の現況を集積した大規模データベース(RAM Legacy database)の解析から,適切な資源管理が着実な資源の回復に繋がることが実証されつつある.そのような状況下において,日本の漁業資源はどのような管理のもと,どのような状態にあるのだろうか?本研究は,RAM Legacy databaseで記録されている世界の漁業資源と,日本で資源評価がなされている30系群弱の漁業資源の状態を比較した.

世界の資源状態に関するデータはRAM Legacy databaseから取得し,日本の資源状態については平成25年度に行われた資源評価の結果を引用した.これらのデータを用いて,全資源量に対する漁獲量の割合(漁獲率)や生物パラメータ(自然死亡率,成熟年齢)などを,日本と世界で比較した。さらに,資源の健全さを示す尺度として用いられる最大持続生産量(MSY)を達成する漁獲率(UMSY)やそのときの資源量(BMSY)を簡易的なプロダクションモデルを用いて算出し,現在の資源量や漁獲圧との比を計算した。

世界の水産資源に比べて,資源評価がなされている日本の水産資源には以下のような特徴が見られた。(1) 成熟年齢が若く,自然死亡率が高い小型浮魚種が多い。(2) 現状の漁獲率がUmsyを上回っている資源の割合,現状の資源量がBmsyを下回っている資源の割合が世界に比べて高いものの,近年は改善傾向(漁獲率は減少,資源量は増加傾向)にある.(3) 資源状態が改善されている資源は,資源評価に基づいて設定された漁獲枠で管理が行われている資源で特に顕著である.発表では,日本の水産資源で特徴的な生物学的特性(成熟年齢・自然死亡率)や管理の有無が,日本の漁業資源の資源量や漁獲率にどのように影響を与えているかを統計的な解析で検討した結果も紹介する.


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