| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(口頭発表) E2-35 (Oral presentation)

交渉ゲームを用いた協力における意思決定様式の進化

*伊藤公一(京大生態研),John McNamara(Bristol Univ.), 山内淳(京大生態研)), Andrew Higginson(Bristol Univ.)

協力行動は、幅広い生物群にみられる現象である。協力の進化はゲーム理論を用いて活発に研究されてきたが、そうした研究ではしばしば相手の振る舞いに応じて自身の戦略を変えることができない事を仮定してきた。しかし、自然界でみられる協力では、相手の協力への投資量に応じて、自身の投資量を変えるような例が報告されている。このような場合、協力の進化は「相手の投資に対してどう応答するか」という意思決定の進化を考える必要がある。しかし、協力への投資量を連続的に変えられるような場合には、進化的安定となるような意思決定戦略が無数に存在しうるため、その進化動態についてはこれまで十分に明らかにされてこなかった。

本研究では、協力における意思決定様式の進化を考える上で行動のエラーに注目した。生物の行動では、しばしば誤って本来とは異なる振る舞いを見せる例が報告されている。このようなエラーの存在は、各個体の協力への投資量にばらつきを生み、相手に対する応答戦略の進化に影響を与えるだろう。本研究では交渉ゲームを用いて、エラーの存在下における協力の意思決定様式の進化動態を解析した。

結果、行動のエラーが存在すると、進化の結果実現されうる戦略はたかだか有限個となり、協力における意思決定様式の進化を解析的に調べられることを明らかにした。相手に対する応答の進化は、利益関数の凹凸に強く依存することがわかった。利益関数が下に凸の形の場合、相手が協力へ投資するほど自身の投資量を増加させる応答が進化したのに対して、上に凸場合には逆の傾向が見られた。また、利益関数が下に凸の場合は相手に対して応答できる方ができない場合に比べて協力レベルが高くなったのに対し、上に凸の場合には応答の存在は協力レベルを低下させた。


日本生態学会